岩崎将史まさふみです。
スタジオ「フルハウス」のグランド・ピアノには「ヤマハ」の「C7LA」というモデルを2007年に導入しています。
「ヤマハ」の「C7」といえば、定番のコンサート・グランド・ピアノで有名です。
「C7LA」は「C7」と「大きさ」と「形」は全く同じです。
それでは、「C7LA」は「C7」とどう違うのでしょうか?
違いは「木」と「弦」です。
Sシリーズと同じ厳選された木を使用
ヤマハのグランドピアノにはCシリーズとは別にSシリーズというのがあります。
このSシリーズの木と、Sシリーズと同等の弦を使用したC7という位置づけのモデルです。
Sシリーズには厳選された産地のスプルースという木が使用されています。
そして「C7LA」には、このSシリーズと同じ木が採用されています。
スブルースというのはトウヒ属のことでマツ科の木です。
「ノーマルC7」は北海道産で、「C7LA」は北米・欧州産の木を使用とのこと。
この木の違いがサウンドにどれ程の影響を与えるのか?
木になりますよね。
違う、気になりますよね。
エゾマツ Picea jezoensis(wikipedia)
実際にどれほど違うのか弾き比べてみた
購入時にどれほど木の影響があるのか?弾き比べてみなければ分かりません。
営業担当者にお願いして、同じ部屋に3台のピアノを並べて頂きました。
並べたのは次の3台です。
- C7
- C7LA
- CF3S (CFIIIS)
最高のCF3Sと比べて
CF3Sが最高なのは知っていました。
今は閉鎖してしまったヤマハのスタジオ「WING」で、常にレコーディングしていました。
僕らフルハウスが業務提携でエンジニアとして入っていたからです。
スタジオ「WING」のCF3Sは絶品で、音の艶、バランス、太さなど全てがパーフェクトでした。
CF3S自体は多くのコンサートホールにありますが「スタジオWING」は数段階上の別物というサウンドの質感でした。
同じモデルのピアノでも「個体」によって違うのはもちろんのこと「温度」「湿度」が徹底的に管理されたスタジオで、常に専属の調律師がメンテナンスをしていると、コレほども違うものかというのが体感できます。
そのCF3Sも同じ場所に並べて試弾させてもらいました。
3台の値段の違い
3台のピアノの値段の違いはこんな感じでした。
- C7 270万円ほど
- C7LA 350万円ほど
- CF3S 1,000万円ほど
- 値段は購入当時の販売価格です
CF3Sを弾いてみます。
この音の重さ、密度、響きは最高♫
当たり前ですが最高のサウンド。
次にC7LAを弾いてみます。
正直な印象は「CF3S」には負けていました。
密度感で負けるC7LAだが、それ以外は遜色なし
中低域、周波数で言うと200Hz~400Hzの密度感、存在感が少し薄い。
重さよりもクリア差を感じる、S6と同じ傾向に感じました。
この時はS6と同じ材質だとは知らなかったので、今振り返ると「なるほど」という感じですが。
ただし、それ以外の違いは感じませんでした。
C7LAとの大きな違いは感じられず?
次にC7を弾いてみました。
ノーマルC7でも、これまで多くのレコーディングをしてきました。
十分なサウンドで録れる技術は持っているつもりなので、ボトムの基準にはなります。
引いた感じはC7LAと違いはあるけど、それほど大きな違いは感じませんでした。
値段差を考えるとノーマルC7でも十分かな〜
ココまでは天板をオープンにしての弾き比べでした。
聴こえる音の中心が「弦の振動する直接音」という状態です。
天板を閉めて弾き比べてみる
次にこう考えました。
「木の響きの違い」は天板を閉めたら分かりやすいかも
天板を閉めて弾き比べてみます。
今度はさっき逆の順序で。
ピッチが狂ったホンキートンクの様なC7
まず最初にC7を弾いてみました。
あれ?調律してないピアノ??
と感じるくらいに音の響きがクグモリました。
音というよりかはピッチ、調律がおかしな感じです。
天板オープンでは、何も問題なかったので、木の振動に癖があるのかもしれません。
次にC7LAを弾いてみます。
天板を閉めても綺麗・ピッチも明瞭でクリアなC7LA
引いた瞬間に驚きました。
?!
天板を閉めているのに、すぐそこで鳴っているようなクリアなサウンド。
そして「ノーマルC7」で感じたピッチの不安定感、サウンドの濁った感じは全くありません。
ス〜ッと自分に音が抜けて飛び込んできます。
木の違い、でけぇ〜〜〜!!
驚きました。
全然、別の楽器でした。
もう、この瞬間で僕の中では「ノーマルC7」の選択肢はなくなりました。
100万円弱の差でこの差はとても大きいです。
CF3Sのクローズは?
最後に「CF3S」と「C7LA」を比べてみます。
例の音の「密度」「重さ」の違いはやはりあります。
ですが、「天板を開けた状態」と同様に「密度」「重さ」以外の感じられませんでした。
富豪なら迷うことなくCF3Sだけど…
値段を考えたらC7LAは優秀すぎる。
C7LAの購入を決意
こうしてC7LAの購入をその場で決断しました。
試弾させてもらったコレ。
この個体をください。
ピアノは同じ型番のモデルでも個体が変わればサウンドは違います。
ですので、購入するときには「実際に弾いてみたその楽器」を購入しなければ、試弾の意味がありません。
いつでも最高の状態を維持
そんな経緯で購入したC7LAも10年目。
スタジオは温度・湿度がほぼ安定しいますので、ピアノのコンディションを維持するにはベストです。
そして購入時から一貫して同じ調律師チームに日々の手入れをお願いしています。
平均すると月に2回は調律が入っていますので、調律費用の捻出が難しいコンクールや資料用の録音でも、良好なコンディションでご利用いただけます。
(CDなどの公表作品としてレコーディングする場合には、基本的に調律をお願いしています。)
是非、あなたの作品づくりの選択肢のひとつに考えてみてください。